松本市M様邸

住み家:松本土建住宅事業部

2010年02月05日 12:02

 「うれしくて、家にいることが楽しくて、すっかり出不精になってしまいました」。コーヒーの香り立ち上るお部屋で、少し照れたようにほほえみを浮かべる奥様がそうおっしゃると、ご主人もその言葉に優しくうなずきます。M様邸は、ほどよい落ち着きで満たされた、それはまるで、お気に入りの雑貨を並べて作ったカフェにお邪魔したような、くつろぎの空間でした。

 当初「家を建てる」ということに熱心だったのは、奥様のほうだったといいます。「半ば趣味のようにきれいなお家を見に行ったり、素敵なものを見てイメージを膨らませたり」(奥様)。ご主人はその様子を「ちょっと先走ってるなあ(笑)」と思いながら見守っておられたそうですが、お互いの夢を話し合う内に、イメージは具体的なプランとなり、やがて現実のものとなりました。

 家づくりの第一歩は、まず夢を話し合うことから。ご夫婦それぞれの夢にも、微妙なイメージの違いがあるものです。Mさんご夫婦も、奥様が「私がまず、こうしたいっていう家のイメージを持っていて」とおっしゃれば、ご主人も「ここはちょっと譲れないっていうところが」と、描く夢に少しの違いがおありだったご様子。
 そんなご夫婦の家づくりは、設計士さんを交え、話し合いを深めていくなかで、次第にまとまっていったようです。
「(夫婦で)お互いに目指すところは違ったけど、設計してくださった方のセンスがよくて助かりました。イメージを伝えると、見える形にして提案をしてくださって、ひとつひとつ決まっていくという感じで」(奥様)「わたしたちにイメージがあっても、具体的な形はよくわからないところがある。そこをわかりやすく形で提案してくれて、これこれ!と」(ご主人)

 奥様が「何でも相談できたんです。ほんとにくだらないような小さな事まで聞いてくださって」と気さくにお話しくだされば、ご主人からはこだわりのお風呂の裏話なども飛び出し、M様邸では、まるでカフェでお茶をしながら弾む会話のように、ふわっとした心地よい時間が過ぎていくのです。

 お話を聞いている間、一人娘のHちゃんはリビングにいて、みんなの話を聞きならお絵かきをしています。大きな窓からたっぷりと入ってくる日の光で暖かく、誰からも見える場所です。ふと気づいて見渡すと、M様邸には、どこにいても人の気配の通る作りの工夫があり、それが気持ちの明るさを引き立たせながら、住む人のコミュニケーションも演出しているかのようです。

 間取りから小物使いに至るまで、「ちょっとしたことも、ひとつひとつしっかり悩んで決めた」と奥様がおっしゃるように、そこかしこに女性らしい細やかな配慮がみられます。
 細かくイメージを伝え、具体的な提案がなされ、しっかり悩んで、悩み抜いて決めたプラン。それでも、実際に家が完成していく過程のなかで、何か困ったことは起こらなかったのでしょうか。思い切ってお訊ねすると、奥様が「ひとつ、ほんとに細かいことで」と教えてくださいました。「取り付けられた手すりの金具がどうも気に入らないと思って、工事の途中で付け替えてもらいまして」
 ほんとに細かいことですいませんと、奥様が、M様邸の担当者であった松本土建の矢口さんに言いますと、矢口さんは「それは、実は私どもにとって、ありがたいことなんです」と、ぱっと明るい笑顔で返事をされます。

「その時に言われたら、対応できますし、後になって実はあのところが失敗って言われてしまいますと対応ができません。ですからそういったご要望は、大変ありがたいことなんです」(矢口)
 ついに完成したM様邸。そうした経緯から、完成見学会では《「これでいい」が「これがいい」になるまで》という名キャッチコピーが付けられたのです。


 相談し、話し合える信頼関係の元、しっかりと悩み、現実の形となったM様邸。内装や小物使いも「トイレの壁やタイル、ライトも、お店やカタログで見て、これっていうものを選んだ」(奥様)ものばかり。お話しくださるご夫妻の言葉の端々からは、単なる買い物ではない、本当に一緒になって建てたという思い入れが伝わってきます。
 他にもこんなエピソードも。「実は、実際に一緒に作った部分もあるんです」なんと、ご主人がご自身で漆喰を塗ったというのです。自分の家という思い入れには、実際に参加してつくったという実感もあってのことだったのです。
 最初は奥様の希望だったという漆喰の壁。話し合ううちに納得して大賛成になったご主人は、仕事の合間に夜な夜な電気を点けて、壁の漆喰をご自身で塗ったのだそう。「軽い気持ちだったんですけど、素人なりにネットで調べたりして」(ご主人)

「やり始めたら思った以上に大変でびっくりして、結構やりがいがありました」と笑うご主人。担当者の矢口さん曰く「こういうのは、うまいヘタではなくて、やることに意味があると思って楽しみに見ていました」
 ご主人は、最初にあまり人目に付かない二階の寝室から練習を重ねていき、最後に塗った一階部分の壁などは、表情と味わいのある実にいい仕上がりとなりました。奥様も「二階を塗り始めたときは、思った以上に粗いなと思ったんですけど、頑張ってくれて」と感謝のご様子。ご主人も「できたときは大満足でした。自分が一緒に参加したって言う、充実感がありました」と、笑みを浮かべてお話しくださいます。
 そして、ご夫婦そろって家を見渡し「いい家だなあ、ってよく自画自賛してる」(奥様)「にやにやしてます」(ご主人)と、しみじみおっしゃるのです。


 実はご夫婦には、一番最初から温めていた共通の夢があったのだそうです。それは、新婚旅行先のメキシコで買ってきたハンモック。「いつか家をつくる時は、このハンモックをつけられる場所を作ろうっていうことを言ってたんです」(奥様)
 二階の日当たりのいい一角に、そのハンモック・スペースはありました。午後の穏やかな日に包まれて、ゆっくりと読書をしたり、お昼寝をしたり。「柄のいいものはおみやげにあげちゃって、今かかってるのはちょっと、なんですけど」そうおっしゃる奥様ですが、お嬢さまのHちゃんは、自慢げにモデルさんに立候補。きっと、お父さんお母さんと一緒にいられるこの素敵な家が大好きなのでしょう。

 キッチンで洗い物をする奥様のそばで、お手伝いをするHちゃん。冷蔵庫には「いまこういう鳥が飛んできたんだよ」と描き上げられたHちゃんの絵が飾られています。
 外の寒さから家族を守り、冬のお日さまをふんわりと取り込む。あたたかな畳スペースでくつろぐご主人が見守るのは、一人娘のHちゃんがお雛様を愛でる後ろ姿。ほっとする家族の幸せを凝縮したひととき。

「自慢の家で、今も楽しみがある」と語るMさんご夫婦。形になった夢の家は、これからの長い生活の中で、より一層、居心地の良さも深めていくことでしょう。
 冬でも部屋を明るく照らす窓からは、暖かい日の光が差し込み、鉢植えに実った苺と、Hちゃんの描いた力作が、ふんわりとした光の中に包まれているのでした。


vol.2終わり




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